mendaXiv:2026.000016

きのこの山派とたけのこの里派におけるエコーチェンバー現象の形成機構と介入効果の実証研究――盲検化の失敗、商品同一性の喪失、および第三勢力介入による敵意の再配分――

pata ID: 6263c8d5-909a-4ea0-8f07-f02a99d1a251

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Abstract

本研究は、チョコレート菓子の選好をめぐる集団分極化について、きのこの山派とたけのこの里派の間に形成されるエコーチェンバーの構造、形成機構および介入可能性を検討した。 きのこの山派412名、たけのこの里派438名、未決定層91名の計941名を対象として、模擬SNS「SnackTalk」上で12週間の縦断研究を実施した。また、独立した240名を対象として商品識別に関する予備実験を実施した。縦断研究の第1期には情報選択、フォロー関係、再共有行動および商品評価の変化を観察し、第2期には720名を統制群、視覚遮断試食群、個包装交換群、第三勢力曝露群へ無作為に割り付けた。 分析の結果、参加者は同派閥の利用者を選択的にフォローし、同派閥情報を再共有する傾向を示した。ネットワーク・モジュラリティは第1週の0.34から第8週の0.57へ上昇した。また、同派閥情報への曝露は自派商品の評価上昇よりも敵対派商品の評価低下と強く関連していた。 視覚情報を遮断した試食では、参加者の95.0%が商品を正しく同定し、実質的な盲検化は成立しなかった。商品識別を困難にするため両商品を粉砕した予備実験では、加工強度の増加に伴って同定率が低下したものの、均質化条件では78.3%の参加者が試料を元の商品とは異なる菓子として評価した。 すなわち、検証した加工条件においては、商品同一性を保存すると識別可能性が残存し、識別可能性を十分に低減すると商品同一性が失われるというトレードオフが認められた。ブランド効果を除去する目的で商品を加工した結果、研究対象そのものが変質するという、測定上の問題が明らかになった。 介入実験では、個包装交換による共同作業が比較的持続的な態度軟化をもたらした。一方、アルフォート支持者を第三勢力として導入した条件では、きのこ派とたけのこ派の相互敵意が低下したものの、アルフォートへの敵意が増大し、測定対象とした集団全体の敵意総量はむしろ増加した。 以上より、きのこ・たけのこ対立は、実在する感覚的差異を基盤としながら、情報選択、社会的同一視および外集団蔑視によって増幅される象徴的集団葛藤として理解できる。また、分極化への介入を評価する際には、特定集団間の敵意低下と、社会全体の敵意低下を区別する必要がある。

要旨

本研究は、チョコレート菓子の選好をめぐる集団分極化について、きのこの山派とたけのこの里派の間に形成されるエコーチェンバーの構造、形成機構および介入可能性を検討した。

きのこの山派412名、たけのこの里派438名、未決定層91名の計941名を対象として、模擬SNS「SnackTalk」上で12週間の縦断研究を実施した。また、独立した240名を対象として商品識別に関する予備実験を実施した。縦断研究の第1期には情報選択、フォロー関係、再共有行動および商品評価の変化を観察し、第2期には720名を統制群、視覚遮断試食群、個包装交換群、第三勢力曝露群へ無作為に割り付けた。

分析の結果、参加者は同派閥の利用者を選択的にフォローし、同派閥情報を再共有する傾向を示した。ネットワーク・モジュラリティは第1週の0.34から第8週の0.57へ上昇した。また、同派閥情報への曝露は自派商品の評価上昇よりも敵対派商品の評価低下と強く関連していた。

視覚情報を遮断した試食では、参加者の95.0%が商品を正しく同定し、実質的な盲検化は成立しなかった。商品識別を困難にするため両商品を粉砕した予備実験では、加工強度の増加に伴って同定率が低下したものの、均質化条件では78.3%の参加者が試料を元の商品とは異なる菓子として評価した。

すなわち、検証した加工条件においては、商品同一性を保存すると識別可能性が残存し、識別可能性を十分に低減すると商品同一性が失われるというトレードオフが認められた。ブランド効果を除去する目的で商品を加工した結果、研究対象そのものが変質するという、測定上の問題が明らかになった。

介入実験では、個包装交換による共同作業が比較的持続的な態度軟化をもたらした。一方、アルフォート支持者を第三勢力として導入した条件では、きのこ派とたけのこ派の相互敵意が低下したものの、アルフォートへの敵意が増大し、測定対象とした集団全体の敵意総量はむしろ増加した。

以上より、きのこ・たけのこ対立は、実在する感覚的差異を基盤としながら、情報選択、社会的同一視および外集団蔑視によって増幅される象徴的集団葛藤として理解できる。また、分極化への介入を評価する際には、特定集団間の敵意低下と、社会全体の敵意低下を区別する必要がある。

キーワード: エコーチェンバー、社会的同一性、感情的分極化、選択的曝露、官能評価、盲検化、構成概念妥当性、集団間接触、菓子政治


1.序論

1.1 研究背景

消費者が特定の商品を選択する行為は、一般に味覚、価格、入手可能性、ブランド認知および過去の経験などから説明される。しかし、商品選好が集団的アイデンティティの一部として組織される場合、購買行動は単なる私的選択にとどまらない。

「きのこの山派」と「たけのこの里派」の対立は、その顕著な事例である。

両商品は同一企業によって製造され、チョコレートと焼菓子を組み合わせるという基本構造を共有する。それにもかかわらず、両派の言説では、食感や形状の差異がしばしば人格、知性、規範意識、さらには文明の発展段階に関する判断へと拡張される。

予備的な言説観察では、次のような主張が認められた。

きのこの山派:

チョコレートとクラッカーが明確に分離されていることは、食べる順序の選択権が消費者に留保されていることを意味する。

全面被覆型の菓子は、各構成要素の自律性を否定している。

たけのこの里派:

チョコレートとクッキーが一体化した構造こそ、製品設計における統合的完成度の証明である。

棒状クラッカーが最後まで残ることは、口腔内に未処理の負債を蓄積する設計上の欠陥である。

これらの言説において、商品の物理的特徴は、単なる官能特性を超えて抽象的価値を担わされている。

チョコレートと焼菓子の配置は、自由、秩序、統合、自律、効率などの象徴となり、商品選好は自己の認知的・道徳的優位性を表明する手段へと変化している。

本研究は、この現象を単なる冗談として処理するのではなく、社会的同一性と情報環境の相互作用として分析する。

1.2 社会的同一性と集団間対立

Tajfel et al.(1971)[14]の最小条件集団研究は、実質的な利害対立や長期的関係が存在しなくても、恣意的な集団分類によって内集団優遇が発生しうることを示した。

この知見は、菓子選好の差異が集団的対立へ発展することを説明する理論的基盤となる。

また、Iyengar et al.(2019)[8]は、政治的分極化の重要な側面として、政策上の意見の隔たりとは異なる「感情的分極化」(affective polarization)を整理している。

感情的分極化とは、他集団の政策や主張に反対することにとどまらず、他集団の構成員そのものを嫌悪、不信、軽蔑の対象として知覚する現象である。

本研究では、以下の二つを区別する。

選好分極化: 両商品に対する評価の差が拡大すること。

感情的分極化: 敵対派の支持者に対する否定的感情が強まること。

この区別は重要である。

きのこの山を高く評価し、たけのこの里を低く評価することは、それ自体として集団間敵意を意味しない。

問題となるのは、その評価差から「たけのこの里を選ぶ人間の判断能力には欠陥がある」という推論が導出される場合である。

本研究は、商品評価と他者評価の結合が、菓子派閥の対立を強化すると考える。

1.3 エコーチェンバーの形成

Cinelli et al.(2021)[4]は、複数のSNSを比較し、ネットワーク上のホモフィリーと同質的な情報拡散がエコーチェンバーの形成に関係することを示した。

Del Vicario et al.(2016)[5]は、共有された信念を中心とする利用者の集合が、情報の拡散過程に影響することを報告している。

これらの研究を踏まえると、菓子派閥におけるエコーチェンバーは、次の循環過程によって形成されると考えられる。

  1. 利用者が特定の商品を選好する。
  2. 同じ商品を支持する利用者との接続が増加する。
  3. 自派に好意的な情報への接触機会が増える。
  4. 敵対派の否定的な言説や極端な行動が選択的に共有される。
  5. 集団間の認識差と敵意が増大する。
  6. その結果、さらに同派閥の利用者との接続が増加する。

ただし、同質的な情報への曝露と、態度の分極化を同一視すべきではない。

Nyhan et al.(2023)[10]は、Facebook上で同じ立場の情報源への曝露を減少させる介入を行ったが、主要な政治的態度指標に測定可能な変化は認められなかった。

一方、Bail et al.(2018)[1]は、反対陣営の投稿への曝露が、一部の参加者において態度を極端化させうることを示した。

さらに、Balietti et al.(2021)[2]は、政治的立場の異なる相手への曝露を、相手との類似性という条件とともに検討している。

したがって、エコーチェンバーへの介入効果を理解するには、情報の多様性だけでなく、情報がどのような対人関係や解釈枠組みの中で提示されるかを考慮する必要がある。

1.4 ブランド効果と感覚的差異

ブランド情報が消費者の主観的経験へ影響することは、先行研究でも指摘されている。

McClure et al.(2004)[9]は、コーラ飲料の匿名提示とブランド情報を伴う提示を比較し、ブランド知識が表明された選好や関連する神経反応に影響することを示した。

Plassmann et al.(2008)[12]は、ワインの価格情報を操作する実験を通じて、価格に関する期待が主観的な快楽評価と神経活動に影響しうることを報告した。

しかし、きのこの山とたけのこの里には、これらの実験とは異なる問題が存在する。

両商品は名称と包装だけでなく、形状、焼菓子部分の密度、チョコレートの被覆形態および咀嚼時の破断特性が異なる。

したがって、ブランド情報を遮断しても、参加者は商品そのものの感覚的特徴から商品名を推定できる可能性がある。

さらに、商品同定を不可能にする目的で形状や内部構造を破壊した場合、加工後の試料が元の商品と同一であるかという問題が生じる。

ここには、単なる盲検化手続の難しさを超えた、構成概念妥当性の問題が存在する。

1.5 研究目的と仮説

本研究では、次の五つの仮説を検討する。

H1:選択的接続仮説

参加者は同派閥の利用者を選択的にフォローし、同派閥の情報を再共有する。その結果、時間の経過とともにネットワークの分離度が増大する。

H2:外集団否定優位仮説

派閥同一視の強さは、自派商品への高評価よりも、敵対派商品への低評価と強く関連する。

H3:感覚的再識別仮説

視覚情報と包装情報を遮断しても、商品固有の形状および破断特性によって高い同定率が維持される。

H4:協力的接触仮説

敵対派の支持者と共同作業を行うことは、単なる商品試食よりも持続的に感情的分極化を低減する。

H5:敵意移転仮説

第三勢力の導入は、既存二派の相互敵意を低下させる一方、新たな外集団への敵意を増大させうる。

加えて、商品を粉砕して識別可能性を低下させた場合の商品同一性について、探索的分析を行う。


2.研究方法

2.1 研究構成と参加者

本研究は、探索的な官能評価予備実験、および12週間の縦断・介入実験から構成される。

主研究には、18歳から69歳までの成人941名が参加した。

参加者の派閥分布は以下の通りである。

派閥 人数
きのこの山派 412
たけのこの里派 438
未決定層 91
合計 941

第1期の観察終了後、きのこの山派とたけのこの里派のそれぞれから派閥同一視得点の高い360名を抽出した。

選出された720名を、各派90名ずつ、計180名からなる四つの介入群へ無作為に割り付けた。

この層化によって、各介入群の派閥構成を均等化した。

また、主研究とは独立した240名を対象に、商品加工による同定可能性と商品同一性の変化を検討した。

2.2 模擬SNS「SnackTalk」

参加者は研究用に構築されたSNS「SnackTalk」を12週間利用した。

SnackTalkは以下の機能を有した。

  • 短文投稿、画像投稿および引用共有
  • 利用者のフォローとフォロー解除
  • 投稿への反応
  • 推薦フィード
  • 投稿の非表示と通報
  • 菓子選好に関するプロフィール設定

フィードの70%は、利用者の過去の閲覧、反応、フォロー関係に基づいて推薦した。残る30%は無作為に抽出した。

参加者は週3回以上ログインし、1回につき10件以上の投稿を閲覧するよう求められた。

研究チームは、通常の参加者投稿に加えて、内容と形式を統制した標準化投稿を提示した。

標準化投稿は、感覚記述型、集団称揚型、外集団侮蔑型、データ提示型、和解型の五種類で構成した。

投稿形式による短期的な態度変化を推定するため、標準化投稿の提示順序を無作為化した。

2.3 縦断研究の手続

第1週から第8週までを自然形成期とした。

この期間、参加者のフォロー関係、閲覧、反応および再共有行動を記録し、第1週、第4週、第8週に商品評価と集団間感情を測定した。

第9週の開始時に介入を実施した。

介入直後の評価を取得し、第12週の終了時に追跡評価を行った。

介入条件は、統制群、視覚遮断試食群、個包装交換群、第三勢力曝露群の四種類である。

2.4 介入条件

2.4.1 統制群

通常のSnackTalk利用を継続した。

追加の試食、共同作業または第三勢力投稿の提示は行わなかった。

2.4.2 視覚遮断試食群

参加者に遮光性アイマスクを装着させ、商品の包装、色彩および外形を視覚的に確認できない条件で試食を実施した。

手指による形状識別を防ぐため、試料は実験者が口元へ提示した。

参加者には、商品が口腔内へ入った時点から、商品を識別したと判断する時点までボタンを押し続けるよう求めた。

商品同定率と同定時間の主解析には、各参加者が最初に提示された一試料への回答のみを使用した。提示する商品は、きのこの山とたけのこの里で均等になるよう無作為化した。

その後、もう一方の商品を提示し、両商品の評価差を測定した。

2.4.3 個包装交換群

各参加者を敵対派の参加者と匿名でペアにした。

双方は自派商品を相手へ送付し、相手の商品を試食した後、共同で比較レビューを作成した。

レビューには、両商品の長所をそれぞれ最低一点ずつ含めることを義務付けた。

商品の構造や味覚に関する否定的記述は認めたが、相手の人格、知能、家庭環境または教育歴に対する評価は禁止した。

本条件の目的は、異なる選好を持つ者同士に、選好の一致を求めることなく協力関係を成立させることである。

2.4.4 第三勢力曝露群

アルフォート支持者を名乗る研究協力者の投稿を、通常フィードへ継続的に挿入した。

投稿では、きのこの山とたけのこの里の二者間対立を相対化し、板状チョコレート菓子の優位性を主張した。

代表的な投稿は以下の通りである。

きのことたけのこの対立は、板状菓子という完成された構造へ到達する以前の過渡的論争である。

船の意匠は文明の移動と発展を象徴する。突起物の配置を争っている段階はすでに終わった。

個包装内の空間利用効率という観点では、きのこもたけのこも構造的に再検討する余地がある。

投稿では、二大派閥を明示的に同一の下位カテゴリーとして扱った。

2.5 商品粉砕予備実験

2.5.1 実験目的

視覚遮断による盲検化の限界を検討するため、商品を加工した場合の同定率と商品同一性評価を測定した。

この実験では、商品識別を困難にすることと、元の商品を評価対象として保存することが両立するかに着目した。

2.5.2 実験条件

独立した参加者240名を、各60名の四条件に無作為に割り付けた。

条件 加工内容
無加工条件 形状を保存し、視覚のみ遮断
粗破砕条件 約10–15 mmの断片へ破砕
細破砕条件 約2–5 mmの粒状へ破砕
均質化条件 チョコレートと焼菓子をまとめて微細化・混合

各条件では、きのこの山由来の試料30名分と、たけのこの里由来の試料30名分を使用した。

各参加者には一試料のみを提示した。

商品同定後、参加者には以下を回答させた。

  1. 元の商品がきのこの山またはたけのこの里のいずれか
  2. 判断の確信度
  3. 判断に使用した感覚情報
  4. 加工後も元の商品として評価できるか
  5. 試料の商品としての完成度

2.5.3 商品同一性の操作的定義

商品同一性を、加工後の試料について「元の商品と同じ商品として評価できる」と回答した参加者の割合とした。

これは商品の形而上学的同一性を直接測定するものではなく、消費者が元の商品として認識し、評価対象として受け入れられる程度を表す操作的指標である。

2.6 主要測定指標

2.6.1 菓子分極化指数

参加者 i の菓子分極化指数を次式で定義した。

SPI_i=R_{i,\mathrm{own}}-R_{i,\mathrm{other}}

ここで、R_{i,\mathrm{own}} は自派商品に対する評価、R_{i,\mathrm{other}} は敵対派商品に対する評価である。

各評価は0から10までの数値とした。

正の値が大きいほど、自派商品と敵対派商品の評価差が大きい。

なお、商品評価差は感情的分極化そのものではないため、後述する対人感情指標と区別して分析した。

2.6.2 派閥同一視

「自分がどちらの商品を選ぶかは、自分がどのような人間であるかと関係する」などの項目を7件法で測定した。

2.6.3 感情温度

敵対派支持者に対する感情を0から100で測定した。

0を「同じ菓子売場を共有したくない」、100を「最後の一袋を譲ってもよい」とした。

2.6.4 ネットワーク構造

フォロー関係から有向グラフを構成し、派閥ごとの接続傾向とコミュニティ構造を分析した。

主要指標として、派閥ラベルによる属性同類選択性、ネットワーク・モジュラリティ、および同派閥・異派閥投稿の共有率を使用した。

エコーチェンバーを単一の恣意的な合成指標へ還元することは避け、接続構造と情報拡散を別々に評価した。

2.6.5 商品識別超過率

加工条件 T における正答率を p_T とし、二者択一の偶然水準50%からの超過を次のように尺度化した。

A(T)=\max\{0,\,2p_T-1\}

完全に偶然水準と一致するとき A(T)=0、全員が正しく識別するとき A(T)=1 となる。

なお、この尺度は観測された正答率の記述的変換であり、盲検化の成立を統計的に証明する指標ではない。

2.6.6 商品同一性保存率

加工条件 T において、試料を元の商品と同じものとして評価できると回答した割合を F(T) とした。

研究上の暫定的な設計目標として、次の二条件を設定した。

  • 商品同定率55%以下
  • 商品同一性保存率80%以上

これらの閾値は分析上の便宜的基準であり、確立された官能評価の標準ではない。

2.7 統計分析

ネットワークの分析にはコミュニティ検出および派閥ラベルの置換検定を用いた。

縦断的な商品評価には、参加者ごとのランダム切片を含む混合効果モデルを使用した。

介入効果は、介入前得点を共変量とする群間比較により推定した。主たる比較は、無作為割付に基づくintention-to-treat分析とした。

商品同定率には二項分布に基づく推定を適用し、95%信頼区間にはWilson法を用いた。

ただし、粉砕予備実験は探索的研究として扱い、その結果から普遍的な不可能性を推論しないこととした。


3.結果

3.1 派閥別の商品評価

自然形成期の開始時点における商品評価を表1に示す。

表1 派閥別の商品評価

評価者 きのこの山 たけのこの里
きのこの山派 7.46 4.91
たけのこの里派 5.02 7.39
未決定層 6.31 6.48

両派とも、自派商品を敵対派商品より高く評価した。

しかし、派閥同一視と自派商品評価との相関は比較的小さかった。

一方、派閥同一視と敵対派商品の低評価との間には、より強い関連が認められた。

関連する変数 相関係数
派閥同一視と自派商品の高評価 0.21
派閥同一視と敵対派商品の低評価 0.53

この結果は、強い派閥帰属が、自派商品の絶対的な味覚的卓越性よりも、敵対派商品の否定によって維持されている可能性を示唆する。

すなわち、参加者は必ずしも自派商品を人類史上最高の食品と評価しているわけではない。

しかし、敵対派商品を選ぶ者の判断能力については、著しく厳格な評価を行っていた。

3.2 エコーチェンバーの形成

ネットワーク・モジュラリティは、時間の経過とともに上昇した。

表2 自然形成期におけるネットワーク構造

時点 モジュラリティ (Q)
第1週 0.34
第4週 0.48
第8週 0.57

同派閥利用者を新たにフォローするオッズは、異派閥利用者をフォローするオッズの2.84倍であった。

また、同派閥投稿の通常再共有率は18.7%であったのに対し、異派閥投稿の通常再共有率は5.9%であった。

ただし、批判的コメント付きでの引用共有を含めると、異派閥投稿の共有率は14.2%まで上昇した。

この結果は、両派が反対意見から完全に隔離されていたわけではないことを示す。

敵対派の情報は、むしろ積極的に引用されていた。

代表的な引用共有には、以下のようなものがあった。

見てください。これが全面被覆を正当化し続けた人々の末路です。

たけのこ派の主張を理解するために共有します。理解できるとは言っていません。

資料保存用。後世の菓子社会学者に必要になる。

これらの投稿では、敵対派情報が自派の認識を修正するためではなく、既存の集団表象を補強するために利用されていた。

H1は支持された。

3.3 投稿形式と態度変化

異派閥投稿への曝露による態度変化は、投稿形式によって異なった。

表3 異派閥投稿の形式と菓子分極化指数の変化

投稿形式 (SPI) 変化
感覚記述型 -0.12
データ提示型 -0.04
和解型 -0.09
集団称揚型 +0.11
外集団侮蔑型 +0.27

具体的な感覚的特徴に言及する投稿は、分極化をわずかに低減した。

一方、敵対派の判断能力や人格を否定する投稿は、分極化を増大させた。

特に、派閥同一視の強い参加者ほど、外集団侮蔑型投稿への反発が強かった。

たとえば、次のような投稿は、きのこの山派における敵対的反応を増加させた。

たけのこの里の優位性は統合された食感にある。きのこ派は、その設計思想を理解する段階に達していない。

この投稿を閲覧した参加者の自由記述には、次のような回答が見られた。

自分たちの商品を褒めるのは構わないが、なぜ急にこちらの知能の話になるのか。

一方、同じ参加者も、その後の投稿では次のように述べていた。

そもそも、たけのこを選ぶような人間に合理的な設計思想を期待すること自体が間違いだった。

3.4 視覚遮断試食における盲検化の失敗

視覚遮断試食群180名のうち、171名が最初に提示された商品を正しく同定した。

正答率は95.0%、95%信頼区間は90.8%から97.3%であった。

指標 結果
正答者 171 / 180名
正答率 95.0%
第一咀嚼以内に同定 147 / 180名(81.7%)
咀嚼開始前に同定 76 / 180名(42.2%)
同定時間の中央値 0.74秒

視覚、包装および手指による触覚を遮断したにもかかわらず、参加者の大部分が商品を即座に識別した。

判断根拠としては、以下の特徴が挙げられた。

  • 棒状クラッカーの存在
  • チョコレート部分と焼菓子部分の接合位置
  • 第一咀嚼における破断様式
  • 焼菓子部分の密度
  • チョコレートの被覆範囲
  • 咀嚼後半に残る破片の形状

代表的な自由記述は以下の通りである。

目隠しをされても、棒が口に入ってきた時点できのこだと分かる。

たけのこは噛んだ瞬間に全体が崩れる。これは商品名の問題ではない。

ブラインド試食と言われたが、暗闇できのことたけのこを食べただけだった。

研究者が商品名を隠したつもりになっている時間は、0.5秒ほどだった。

視覚遮断試食による菓子分極化指数の変化は、介入直後で-0.18と小さかった。

したがって、視覚情報の遮断は、両商品の匿名性を十分に確保できなかった。

H3は支持された。

3.5 誤同定者の評価

商品を誤同定した9名について探索的分析を行った。

誤同定者では、実際の商品よりも推定した商品名に沿った評価が生じる傾向が認められた。

たけのこの里をきのこの山と誤認したきのこ派参加者は、その試料を通常のたけのこの里よりも高く評価した。

反対に、きのこの山をたけのこの里と誤認したきのこ派参加者は、以下のように回答した。

たけのこにしては、妙に乾燥していて未完成な食感が残る。

当該試料は実際にはきのこの山であった。

ただし、誤同定者は少数であり、誤同定を引き起こした感覚的特徴も統制されていない。

したがって、この結果をブランド効果の因果的証拠として解釈することはできない。

3.6 粉砕予備実験

加工強度の増加に伴い、商品同定率は低下した。

表4 加工条件と商品識別・同一性保存

加工条件 正答者 正答率 同一性保存率
無加工 57/60 95.0% 96.7%
粗破砕 52/60 86.7% 88.3%
細破砕 39/60 65.0% 51.7%
均質化 32/60 53.3% 13.3%

無加工条件および粗破砕条件では、ほとんどの参加者が試料を正しく識別した。

粗破砕条件では、次の自由記述が得られた。

きのこを壊したものにすぎない。

たけのこの遺構が残っている。

細破砕条件では識別率が65.0%へ低下した。しかし、同一性保存率も51.7%へ低下した。

均質化条件では、正答率が53.3%となり、偶然水準との差は検出されなかった。

ただし、この結果だけから、完全な盲検化が統計的に証明されたとはいえない。

一方、均質化試料を元の商品として評価できると回答した参加者は、60名中8名にとどまった。

47名(78.3%)は「どちらでもない別の菓子」、5名(8.3%)は「菓子であるか判断しにくい」と回答した。

自由記述には、以下のようなものがあった。

識別できないのではなく、識別すべき対象が失われている。

きのことたけのこの違いを消した結果、両方とも消えた。

元の商品への偏見を除去するため、元の商品も除去されている。

これは公平な試食ではなく、停戦監視団が両軍を粉砕した状態である。

よく分からない甘い粉を公平に評価する能力は得られたが、それで何が分かるのかは分からない。

均質化条件では両派の評価差も縮小した。

しかし、この結果は元の二商品に対する評価が収束したことを意味しない。

評価対象そのものが、元の商品から変化していたためである。

3.7 商品同一性と識別可能性のトレードオフ

商品識別超過率 A(T) と商品同一性保存率 F(T) の関係を表5に示す。

表5 商品識別超過率と商品同一性保存率

加工条件 識別超過率 A(T) 同一性保存率 F(T)
無加工 0.900 0.967
粗破砕 0.733 0.883
細破砕 0.300 0.517
均質化 0.067 0.133

加工によって識別可能性を低減すると、同一性保存率も低下した。

事前に設定した設計目標、すなわち「商品同定率55%以下」と「同一性保存率80%以上」を同時に満たす条件は存在しなかった。

この結果は、検証した加工手続の集合において、盲検化の程度と商品同一性との間にトレードオフが存在することを示す。

ただし、これはあらゆる加工方法において両立が不可能であることを証明するものではない。

研究チームは、この関係を暫定的に「商品同一性・盲検化フロンティア」と呼称した。

3.8 介入効果の比較

各介入群の菓子分極化指数について、介入前からの平均変化量を算出した。

表6 介入群別の菓子分極化指数の変化

介入群 介入直後 4週間後
統制群 +0.05 +0.09
視覚遮断試食群 -0.18 -0.07
個包装交換群 -0.36 -0.31
第三勢力曝露群 -0.67 -0.54

視覚遮断試食群では、小さな態度軟化が認められたが、効果の大部分は追跡評価時点までに失われた。

参加者の自由記述には次のようなものがあった。

目隠しされてまで争うことではないとは思った。しかし、食べたのは明らかにきのこだった。

これに対し、個包装交換群では効果が比較的持続した。

共同レビューに参加したきのこ派の一人は、次のように述べた。

たけのこ派は食感を単純化していると思っていたが、相手は生地の密度とチョコレートの融解タイミングを別々に論じていた。意見には同意しないが、少なくとも無思考ではなかった。

一方、次の回答も多かった。

相手は誠実だった。ただし、たけのこが優れているという結論は依然として誤っている。

したがって、個包装交換による介入は、商品選好の一致ではなく、敵対派の支持者を判断能力のある主体として再認識することを通じて効果を発揮したと考えられる。

H4は支持された。

3.9 第三勢力介入とアルフォート効果

第三勢力曝露群では、きのこ派とたけのこ派の相互感情温度が上昇した。

一方、アルフォート支持者に対する感情温度は大幅に低下した。

表7 第三勢力曝露群における感情温度

評価対象 介入前 介入後
既存の敵対派 35.0 46.8
アルフォート支持者 43.2 20.8

また、次の項目への同意が増加した。

きのことたけのこは、細部では対立していても、同じ立体チョコレート菓子文明に属する。

これと同時に、以下の項目への同意も増加した。

板状チョコレート菓子が本論争へ介入することは、菓子カテゴリーに対する越権行為である。

両派間の和解は、より包括的な菓子社会への帰属意識ではなく、新たな共通外集団への対抗意識によって成立した可能性がある。

3.9.1 敵意総量の変化

特定二派間の感情温度だけでは、介入効果を十分に評価できない。

そこで、本研究では既存の敵対派と第三勢力の双方に対する否定的感情を合計した、菓子社会敵意尺度を定義した。

H_i=(100-T_{i,\mathrm{other}})+(100-T_{i,\mathrm{third}})

ここで、T_{i,\mathrm{other}} は既存の敵対派に対する感情温度、T_{i,\mathrm{third}} は第三勢力に対する感情温度である。

介入前後で評価対象を固定することにより、単なる評価対象の増加による見かけ上の敵意増大を避けた。

第三勢力曝露群における平均値は以下の通りであった。

H_{\mathrm{before}}=121.8

H_{\mathrm{after}}=132.4

敵意総量は8.7%増加した。

すなわち、きのこ派とたけのこ派の相互敵意が減少した一方、その減少を上回る敵意がアルフォートへ向けられた。

H5は支持された。


4.考察

4.1 菓子対立は味覚差から人格評価へ拡張される

本研究では、派閥同一視と敵対派商品の低評価との間に、自派商品の高評価よりも強い関連が認められた。

この結果は、商品選好の差異が、集団的アイデンティティを介して他者評価へ拡張されていた可能性を示唆する。

きのこの山を好むことと、たけのこの里を好む者の判断能力を否定することは、本来独立した判断である。

しかし、派閥の形成によって、商品評価は支持者の属性を推定する手掛かりとして利用されるようになる。

ここでは、対象物に関する判断と、その対象を支持する人間に関する判断の境界が失われている。

この現象は、商品選好が個人の趣味から集団間の象徴的境界へ変化する過程として理解できる。

4.2 エコーチェンバーは情報の不在だけでなく敵対的流通によっても成立する

本研究では、異派閥情報への接触が完全に失われていたわけではなかった。

むしろ、敵対派の極端な発言は積極的に引用され、自派内部で共有されていた。

したがって、エコーチェンバーを、反対意見が単純に遮断された空間として理解するだけでは不十分である。

重要なのは、異論の存在ではなく、その異論がどのような認知的枠組みで処理されるかである。

敵対派の投稿を「相手の主張」として理解する代わりに、「相手の愚かさを示す標本」として収集する場合、異論への曝露は態度修正の機会にならない。

むしろ、自派の既存認識を強化する材料となる。

このような敵対的情報流通は、異なる立場への接触量が多くても認識論的な閉鎖性が維持されうることを示している。

4.3 盲検化の失敗は実験実施上の不備にとどまらない

本研究の重要な知見の一つは、視覚遮断による盲検化が成立しなかったことである。

参加者は、商品の名称、包装および外形を視覚的に確認できない状態であっても、ほぼ即座に商品を識別した。

この結果は、商品名が単なる外部ラベルではなく、商品固有の感覚的特徴と強く結合していることを示す。

きのこの山とたけのこの里は、異なる名称を与えられた同一の物質ではない。

両商品は異なる幾何学的形状を持ち、異なる順序で破断し、異なる割合で溶解し、異なる残存物を口腔内へ残す。

視覚情報を遮断しても、参加者はこれらの感覚的特徴から商品概念を再構成する。

ブランド名を隠すことはできる。

しかし、クラッカーの軸を隠すことはできない。

Bang et al.(2004)[3]が臨床試験における盲検化の評価で論じたように、形式上の盲検化手続と、実際に参加者が割付条件を識別できないことは区別する必要がある。

本研究でも、視覚遮断という操作を実施したことは、その操作が目的とする情報遮断に成功したことを意味しなかった。

4.4 粉砕による対象消滅と構成概念妥当性

商品識別を防ぐために両商品を粉砕すると、識別率は低下した。

しかし、同時に試料の商品同一性も低下した。

均質化条件では、参加者の大部分が試料を元の商品とは異なる菓子として認識した。

ここで重要なのは、単に粉砕試料の食感が変わったという点ではない。

当初、研究者が測定しようとしていたのは、きのこの山とたけのこの里に対する評価であった。

しかし、均質化後に測定されたのは、元の商品に由来する材料から作られた別の食品に対する評価である。

両者は同一の構成概念ではない。

形式的には、研究者は次の比較を意図していた。

Y_i(x,\text{ブランド情報なし})

ここで、x は商品自体の感覚的性質を表す。

しかし、粉砕によって商品構造を変化させた場合、実際に比較されるのは次の二条件となる。

Y_i(T(x),\text{ブランド情報なし})

ここで、T(x) は粉砕操作によって変質した試料である。

この場合、観察される評価差には、ブランド情報の効果だけでなく、商品加工そのものの効果が含まれる。

したがって、元の商品に対するブランド効果を識別することはできない。

本研究において、ブラインド試験による偏見の除去は、研究対象を保存する限り達成されず、盲検化を強める操作は研究対象を変質させた。

偏見を除去するために対象を破壊してしまえば、偏見の測定にも成功したことにはならない。

4.5 完全な盲検化と商品同一性は原理的に両立しないか

本研究の結果から、あらゆる方法における両立不可能性を主張することはできない。

検討したのは、視覚遮断および三種類の粉砕加工に限られる。

将来的には、形状を保存しながら咀嚼時の感覚を操作する方法、あるいはブランドラベルを無作為に付け替える方法などが考えられる。

ただし、ラベルの付け替えにおいても、参加者が商品を識別した時点で提示情報と感覚情報の不一致が生じる。

その場合、参加者が「商品の認識を修正する」のか、「研究者が虚偽のラベルを提示したと判断する」のかは別途検討しなければならない。

後者の場合、実験はブランド効果ではなく、研究者に対する不信の発生を測定する可能性がある。

また、ISO 4120:2021[7]で規定される三点識別法は、試料間に知覚可能な差異が存在するかを検討する方法である。この方法は、試料の差異の有無を検出するものであり、ブランド情報を除去した元の商品への評価を直接識別するものではない。

したがって、商品間の識別可能性を低下させることと、研究対象の同一性を維持することを、独立した設計要件として扱う必要がある。

本研究で観察されたのは、検証した加工方法の範囲において、両要件を同時に満たす解が存在しなかったということである。

4.6 社会的に構築された対立は、物質的差異を必要としないわけではない

本研究では、商品固有の感覚的差異が、視覚遮断下でも高い精度で識別された。

この結果は、両商品の差異が、広告や集団言説によって恣意的に作り出された虚構ではないことを示す。

一方で、商品間に実在する感覚的差異から、支持者間の人格的・知的優劣を導くことはできない。

したがって、本対立は、実在しない差異の捏造ではなく、実在する差異の象徴的な過剰解釈によって成立していると考えられる。

きのこ派とたけのこ派は、存在しない差異を発明したのではない。

存在する差異へ、文明論を過剰積載したのである。

4.7 協力的接触は選好の一致を必要としない

個包装交換群では、敵対派に対する評価が比較的持続的に改善した。

この結果は、集団間接触が偏見を低減しうるとするPettigrew and Tropp(2006)[11]のメタ分析、および共通目標による集団間葛藤の低減を検討したSherif(1958)[13]の研究と整合的である。

本研究における個包装交換は、単なる異論への曝露ではなかった。

参加者は、敵対派の支持者と共同して一つのレビューを作成する必要があった。

そのためには、相手の発言を理解可能な主張として扱わなければならなかった。

これは、相手の結論へ同意することとは異なる。

たけのこの里が優れているという主張を誤りだと考え続けながら、たけのこの里の支持者が誠実に判断していることを認めることは可能である。

本研究の結果は、選好の収束と、他者の認知的主体性の承認とを区別する必要性を示している。

4.8 共通外敵の導入は和平を保証しない

第三勢力曝露群では、きのこ派とたけのこ派の相互敵意が最も大きく低下した。

しかし、その変化と同時に、アルフォートへの敵意が増大した。

二大派閥は、それまでの対立を一時的に停止し、「立体チョコレート菓子」という共通の上位カテゴリーを形成した。

共通内集団アイデンティティを扱うGaertner et al.(1994)[6]は、この再分類過程を考える理論的背景となる。ただし、本稿で描いたアルフォートへの敵意移転は架空の結果であり、同研究が菓子派閥について実証した事実ではない。

この過程は、一見すると集団間融和として評価できる。

しかし、形成された共通カテゴリーは、アルフォートという新たな外集団を排除する境界として機能した。

きのことたけのこの違いは些細なものとして再解釈され、アルフォートとの違いが文明的な境界として強調された。

この結果、既存二派の相互敵意は低下したものの、評価対象全体の敵意総量は増加した。

すなわち、介入は敵意を消滅させたのではなく、その対象を再配分した。

ここから、介入評価には二種類の成果指標が必要であると考えられる。

第一は、特定集団間の敵意が低下したかという局所的指標である。

第二は、介入によって他集団への敵意が増加していないかという全体的指標である。

局所的な敵意低下をもって社会全体の分極化が緩和したと結論することはできない。

和平が敵の輸入によって成立しているなら、それは敵意会計上の付け替えにすぎない。

4.9 情報プラットフォーム設計への含意

本研究では、敵対派への侮蔑を含む投稿が、単なる感覚的特徴の記述よりも高い反応を獲得した。

これは、情報プラットフォームがエンゲージメントのみを最適化する場合、敵対的な相互作用を増幅する可能性を示唆する。

特に、批判的引用共有は、投稿への賛同と投稿への反発を、同じ拡散指標として計数する危険がある。

ある投稿が大量に共有されていることは、その主張が支持されていることを意味しない。

むしろ、多くの利用者が敵対的な標本として共有している可能性がある。

したがって、プラットフォームの推薦機構では、少なくとも通常の支持的共有と敵対的引用共有を区別することが望ましい。

また、分極化緩和を目的とする介入では、異なる立場の投稿を強制表示するだけでなく、具体的な対象属性を比較できる環境や、共通の成果物を作成する機会を設計することが重要である。

ただし、共通目標を与える際に、別の集団を共通外敵として設定することは避けるべきである。

特に、アルフォート、ポッキー、ブラックサンダーなどを、二大派閥融和のための脅威対象として政策的に導入することには慎重でなければならない。


5.研究の限界

本研究には、以下の限界がある。

第一に、模擬SNS上での行動は、現実のSNSにおける行動を完全には再現しない。

また、同質的な情報環境の形成には、利用者自身の選択と推薦アルゴリズムによる増幅の双方が関与している。今回の観察デザインでは、両者の寄与を厳密に分離できない。

第二に、介入対象者は派閥同一視得点の高い参加者から選出されている。

したがって、派閥への帰属意識が弱い一般消費者に、同じ介入効果が生じるとは限らない。

第三に、視覚遮断試食では完全な盲検化を達成できなかった。

商品識別率が高かったため、元の商品に対するブランド知識の寄与を厳密に推定することはできない。

第四に、粉砕予備実験で観察された商品同一性の喪失は、参加者の主観的判断によって測定された。

商品の同一性には、原材料、製法、構造、商標、消費者認知などの異なる定義が存在する。本研究の指標は、そのうち消費者認知に関する一側面のみを評価している。

第五に、検証した加工方法は四条件に限られる。

したがって、本研究が示したトレードオフを、あらゆる盲検化方法に一般化することはできない。

第六に、第三勢力介入によって測定された敵意総量は、事前に設定した集団と重みに依存する。

評価対象にポッキー、コアラのマーチ、ブラックサンダー、その他の菓子派閥を含めた場合、敵意総量の変化は異なる可能性がある。

第七に、介入条件は参加者単位で割り付けられたが、参加者間の情報交換による干渉が生じる可能性がある。より厳密な因果推論には、独立したコミュニティ単位での無作為化が望ましい。

第八に、すぎのこ村の歴史的排除を十分に検討できていない。

現行の二大派閥制は、当初から二大派閥のみで形成されたものとは限らない。

すぎのこ村を分析対象から除外することは、現在の派閥秩序を所与のものとして扱い、その秩序が成立した歴史的条件を不可視化する危険がある。

関連する歴史資料と参加者の確保が困難であったことから、本研究ではこの問題を今後の課題とした。

第九に、菓子選好をめぐる対立は、政治、民族、宗教その他の高コストな社会的対立と比較して、実質的利害が小さく、離脱可能性も高い。

したがって、本研究の介入結果を、深刻な社会的葛藤へ直接適用することはできない。

しかし、実質的利害が小さい対象であっても、参加者が選択的曝露、外集団蔑視、歴史叙述および象徴的境界の維持を行ったという観察は、集団対立の形成条件を考察する上で示唆的である。


6.結論

本研究は、きのこの山派とたけのこの里派の間に、ネットワーク上のホモフィリーと選択的情報拡散から構成されるエコーチェンバーが形成されることを示した。

派閥同一視は、自派商品の絶対的な高評価よりも、敵対派商品の低評価と強く関連していた。

また、敵対派の情報への曝露は、提示形式によって分極化を緩和する場合と増大させる場合があった。

視覚遮断試食では、参加者の95.0%が商品を正しく識別した。

形式上、ブラインド化は実施された。

しかし、実質的な盲検化は成立しなかった。

さらに、商品識別を困難にするため両商品を粉砕した場合、商品同定率は低下したものの、同時に商品同一性も失われた。

均質化された試料は、参加者の大部分にとって、きのこの山でもたけのこの里でもない別の菓子となった。

これらの結果は、ブランド情報を遮断する実験操作が、必ずしも元の研究対象を保存するとは限らないことを示す。

きのことたけのこの違いを隠すことはできる。

ただし、検証した方法では、そのためにきのことたけのこを消さなければならなかった。

一方、個包装交換と共同レビューは、選好の一致を要求することなく、敵対派の支持者を判断主体として再認識させた。

第三勢力の導入は二大派閥の相互敵意を低下させたが、その効果はアルフォートへの敵意の増大を伴っていた。

したがって、共通外敵による団結を、社会全体の分極化解消と同一視すべきではない。

菓子選好の自由は、単に消費者が棚からどの商品を取るかという問題ではない。

それは、自分とは異なる感覚的経験に価値を見いだす者を、判断能力のある主体として承認できるかという問題でもある。

他者の味覚を共有する必要はない。

しかし、他者にも味覚があることは認めなければならない。


倫理的配慮

本研究は、東都大学菓子社会科学研究倫理委員会の承認を得たものとする(架空承認番号:TUSSS-2026-014)。

参加者には、研究目的、データの利用方法、途中離脱の自由および試食食品の原材料について説明し、同意を得た。

視覚遮断試食について、倫理委員会からは次の指摘がなされた。

視覚遮断下で棒状クラッカーを摂取させる科学的必要性が十分に説明されていない。

研究チームは、ブランド情報の遮断を目的とする旨を回答した。

実験開始後、その説明が楽観的であったことが判明した。

また、第三勢力曝露実験については、終了後に参加者へ研究協力者の役割と投稿内容の操作について説明し、必要な事後説明を実施した。

利益相反

著者らは、本研究に関連する申告すべき経済的利益相反を有しない。

第一著者は研究期間中、親族からアーモンドチョコレート一箱を受領したが、本研究の結果への影響はない。

第二著者は幼少期にたけのこの里を好んでいたとの証言があるが、現在は方法論的不可知論の立場を取っている。

第三著者は粉砕予備実験後に残った試料を廃棄せず摂取したが、研究データの分析後であった。

研究資金

本研究は、日本競争的菓子研究振興会基盤研究費「二大チョコレート菓子体制における敵意の再生産」(架空課題番号:JSCS-20KINO-TAKE)の助成を受けたものとする。

助成機関は、研究デザイン、分析、論文執筆および掲載判断に関与していない。

データおよびコードの公開

本論文は架空研究であり、実測データおよび実験用コードは存在しない。

実際に再現研究を行う場合は、匿名化データ、分析スクリプト、推薦アルゴリズムの設定、刺激文および解析計画を公開することが望ましい。

特に自由記述データには、個人を特定しうる独自の菓子思想が含まれる可能性があるため、公開範囲に配慮する必要がある。

著者貢献(架空研究チームの設定)

山野きの子:概念化、方法論、統計分析、原稿執筆

竹里 真:実験設計、データ収集、官能評価

菓子谷 統:ネットワーク分析、研究監督、粉砕装置の洗浄、両派からの抗議対応

謝辞

試食用商品の破砕作業に協力した東都大学菓子社会科学研究科の学生諸氏に感謝する。

また、研究期間中、一貫して「どちらも食べる」と回答し続けた未決定層の参加者に敬意を表する。

彼らは中立的だったのではない。

二大派閥制が要求する分類そのものを拒否していた可能性がある。


参考文献

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Sources / References

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    引用 · 論文 · 実在資料 · Tajfel, H., Billig, M. G., Bundy, R. P., & Flament, C. (1971) · 1.2

    実在する参考資料。本稿の架空の参加者・実験結果・統計値の出典ではない。

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